建物の部分鑑定評価(個人と法人間の売買)大阪市南部

建物の部分鑑定評価(個人と法人間の売買)大阪市平野区

不動産鑑定評価ケーススタディー(この案件の概要)

依頼者は、大阪市南部(阿倍野区、平野区、住之江区、西成区、住吉区、東住吉区)の収益マンションのオーナーで、建物売買価格の参考のためでした。

大阪市南部(阿倍野区、平野区、住之江区、西成区、住吉区、東住吉区)
大阪市南部(阿倍野区、平野区、住之江区、西成区、住吉区、東住吉区)

この案件は、賃貸に供されている複合不動産の建物のみを部分鑑定評価の依頼であり、このような建物のみの鑑定評価の依頼は、多くありませんが、たまにあります。実は独立して最初にお話があった案件がこの建物の部分鑑定評価の話でした。

この案件は、「建物及びその敷地が一体として市場性を有する場合における建物のみの鑑定評価」であり、この場合の建物の鑑定評価は、その敷地と一体化している状態を前提として、その全体の鑑定評価額の内訳として建物について部分鑑定評価を行うものです。 分かりやすく言えば、一棟の収益マンションの建物部分を収益面から鑑定評価をすることがメインで、建物の積算面の価格は試算価格としてサブであり、規範性は低い案件でした。

不動産鑑定士は、建物の鑑定評価を行いますが、一級建築士のような詳細な評価は難しく、弊社の場合、一棟のマンションの建物の積算価格の場合、建設事例の再調達原価や公表されている標準的な建物の再調達原価を時点修正し、階層、地下の有無、延床面積、間取り、形状、グレードから評点を付けて査定し、躯体部分、仕上部分、設備部分の耐用年数、割合により経過年数の減価額を把握し、必要に応じて観察減価を併用して求めます。

不動産鑑定評価基準:第5章 鑑定評価の基本的事項 対象確定条件

不動産が土地及び建物等の結合により構成されている場合において、その状 態を所与として、その不動産の構成部分を鑑定評価の対象とすること(この場合の鑑定評価を部分鑑定評価という。)。

不動産鑑定評価基準、国土交通省

不動産鑑定評価基準:第7章 鑑定評価の方式  

第1節 価格を求める鑑定評価の手法 Ⅱ 原価法

原価法とは

原価法とは、価格時点において、対象不動産の再調達原価を求め、この再調達原価 について減価修正を行って積算価格を求める手法を言います。この原価法は、再調達原価の把握及び減価修正を適切に行うことができるときに有効な手法であり、対象不動産が土地の場合でも、造成費用から土地の再調達原価を求めることができる ときは原価法を適用することが可能です。

再調達原価とは

再調達原価とは、対象不動産を価格時点において新規に再調達することを想定した場合における、鑑定士が判断した見積り金額のようなものを言います。したがって、過去にいくらで建物を建築したという金額が分かっていても、その数値を使うわけではありません。過去の建築費から、建築費指数により適正に時点修正出来る場合、検証資料としては有効です。

置換原価とは

なお、古い伝統的な建築物などの場合、建設資材、工法等の変遷により、再調達原価を求めるこ とが困難な場合が考えられます。この場合には、対象不動産と同等の有用性を持つものに置き換えて求め た原価(置換原価)を再調達原価とみなして評価することになります。

再調達原価を求める方法

 再調達原価を求める方法には、直接法と間接法があります。収集した建設事例の信頼度に応じて、どちらかを適用し、必要に応じて併用して求めます。 

直接法は、対象不動産そのものについて直接的に積み上げで再調達原価を求める方法を言います。具体的には、対象不動産について、使用資材、品等を分析し、標準的な直接工事費を積算します。そしてこれに間接工事費及び一般管理費等を加算して標準的な建物の建設費を求め、これに、「発注者が直接負担すべき通常の付帯費用」を加算して再調達原価を求めます。詳細な建物の資材ごとの原価計算が求められ、一級建築士さんが求めるやり方に近いと思われます。

間接法は、対象不動産と類似の建設事例(具体的なトータルの建築費が分かる事例)から間接的に対象不動産の再調達原価を求める方法を言います。具体的には、当該類似の不動産等について、建設に要した直接工事費、間接工事費、一般管理費、付帯費用並びにこれらの明細を把握できる場合に、これらの明細を詳細に分析して求めます。この場合、詳細な分析については、具体的な建設事例をもとに、必要に応じて時点修正を行い、かつ、地域要因の比較及び個別的要因の比較を行って、対象不動産の再調達原価を求めます。

上記再調達原価について減価修正を行うのですが、この減価修正の目的は、減価の要因に基づき発生した減価額を対象不動産の再調達原価から控除して価格時点における対象不動産の適正な積算価格を求めることを言います。したがって、減価率だけでなく、減価額も表示されることになります。

例 ☓ 再調達原価✕(1-減価率)=建物の積算価格

例 ○ 再調達原価-建物の減価額=建物の積算価格

上記減価の要因は、物理的要因、機能的要因、経済的要因に分けられます。

① 物理的要因:不動産を使用することによって生ずる物理的な減価で、会計上の減価償却と同じような物理面から見た減価額を言います。

② 機能的要因:不動産の機能的陳腐化を言います。具体的には、容積率の消化が悪い場合などの建物と敷地との不適応、型式の旧式化やオフィスビルなどの設備の不足(OA対応、セントラル空調)、能率の低下等があげられます。

③ 経済的要因:不動産の経済的不適応を言います。具体的には、対象地域の衰退、 対象不動産の用途とその付近に求められる用途の不適合、対象不動産の市場性の減退等があげられます。 

以下の減価修正の方法は、抜粋であり、一部省略しています。

減価修正の方法

減価額を求めるには、次の二つの方法があり、これらを併用するものとする。

① 耐用年数に基づく方法

耐用年数に基づく方法は、対象不動産の価格時点における経過年数及び経済的残存耐用年数の和として把握される耐用年数を基礎として減価額を把握 する方法である。

耐用年数に基づく方法には、定額法、定率法等があるが、これらのうちい ずれの方法を用いるかは、対象不動産の用途や利用状況に即して決定すべきである。

② 観察減価法

観察減価法は、対象不動産について、設計、設備等の機能性、維持管理の 状態、補修の状況、付近の環境との適合の状態等各減価の要因の実態を調査 することにより、減価額を直接求める方法である。

不動産鑑定評価基準、国土交通省

不動産鑑定評価基準:各 論 第1章 価格に関する鑑定評価

建物の部分鑑定評価

第3節 建物の鑑定評価

鑑定評価の依頼目的及び条件により、建物及びその敷地が一体として市場性を有 する場合における建物のみの鑑定評価と建物及びその敷地が一体として市場性を有 しない場合における建物のみの鑑定評価があります。

Ⅰ 建物及びその敷地が一体として市場性を有する場合における建物のみの鑑定評価

建物及びその敷地が一体として市場性を有する場合における建物のみの鑑定評価は、建物がその敷地と一体化している状態を所与として、その複合不動産全体の鑑定評価額の内訳として建物について部分鑑定評価を行うやり方です。

この場合、積算価格を標準とし、配分法に基づく比準価格及び建物残余法による収益価格を比較考量して決定するものとすると規定されていますが、収益不動産の場合、複合不動産全体の価格は収益価格で把握されることが考えられるので、積算価格を標準とするべきかは、案件に即して判断されるべきと考えます。なお、不動産鑑定評価基準では、「複合不動産価格をもとに建物に帰属する額を配分して求めた価格を標準として決定することもできる」とも規定されています。

Ⅱ 建物及びその敷地が一体として市場性を有しない場合における建物のみの鑑定評 価

この場合は、特殊価格を求める場合に該当すると考えられており、文化財の指定を受けた建造物、宗教建築物などが該当し、この場合における建物の鑑定評価は、置換原価等を考慮して求めた積算価格を標準として求めることになります。

建物評価の論点(建物に効用等が認められない場合における建物のみの部分鑑定評価)

建物に効用等が認められない場合における建物のみの部分鑑定評価では、土地を最有効使用の状態にするために必要な解体費用相当額などの減価要因は、更地としての再調達原価に対する減価要因(建付減価)として認識されますので、このケースにおける建物のみの部分鑑定評価における建物価格は0円となります。

補足

鑑定評価というサービスにも価格競争が行われています。依頼目的が、担保評価(金融機関にその不動産鑑定士でOKか確認が必要)の場合や大まかな相場を知りたい場合、兄弟間、親族間の売買などの案件が複雑でない場合は、価格重視の鑑定評価でも問題がないと思われますが、税務目的や訴訟目的、その他複雑な案件では、内容と報酬のバランスの取れた依頼をされたほうが、最終的に依頼者にメリットがあると思われます。

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